静かな時間
昼間がバタバタとしていて、小刻みにしか機の前に座れない日々です。焦って気持ちが前のめりになって作品に影響が出ないよう、又締切に間に合うように、晩酌の誘惑をぶんぶんと振り払って、ムスメが寝付いた後は工房に向かいます。
この時期の夜なべは、カエルの唄が聞こえ、涼しい夜風がソヨッと部屋に吹き込んで、静かで穏やかな空気が漂っています。静かに集中し、静かに作業を進め、静かに一日が終わる、なんとも心の静まる夜です。
今週は、夜なべの日々が続きそうです。
妄想の時間
次にすることしか考えられないくらいのジタバタした日々が少し落ち着き、機に向かえる機会が戻ってきました。織る前の“機上げ”と呼ばれる作業の一つに“綜絖(そうこう)通し”という工程があります。別名“もじり通し”とも呼ばれるこの工程は、綜絖の輪(針金をくるんと輪にしたところ)に、糸を一本一本としていきます。
この単純作業が始まると、妄想というか頭の中ではつらつらと色んなことが浮かんできます。
若いころの失敗を思い出し一人で恥じ入っててみたり、近所の猫が目に入ると、猫の世界について深く考えてみたり、お昼ご飯に何を作るか考えてみたりと、頭の中は結構忙しいのですが、手と目はひたすら糸と綜絖を見つめています。
一見辛気臭いこの作業ですが、ふかーく自分の世界に浸れるので綜絖通しの時間は結構気に入っています。
無事、綜絖にも筬にも糸が通ったので、本日からいよいよ織り始めます。
sense of touch
気持ちの良い天気の週末に、糊つけをしました。青い空の下で、パリッパリに乾いてくれました。次は、グルグルと枠に巻いていきます。
先週、雑誌の編集の方が来られ、主人と二人でインタビューを受けました。様々な質問に答える中で、私自身が「皮膚感覚」を大切にしている事に気付きました。ただ、インタビュー中は「皮膚感覚」という言葉が浮かばず、「風を感じたりとか、太陽の光を感じたりとか…」等、シンプルというか簡単な言語を繰り返し使うばかりで、上手く伝わったのか、全く自身がありません。
ただ、このようなじっくり聞いていただける機会があると、普段意識していな自分に気付くことがあるんだな、と発見しました。じっくりと静かにこちらの話を聞き、それをしっかりかみしめてから、次の質問をしてくださった私よりも随分若い編集者の方の姿勢を見て、じっくり聞くと、相手も話しやすいんだな、という事も学びました。
そして仕事に楽しげに集中し、より良いものを撮りたいという、これまた私よりも随分若いカメラマンさんの姿勢にも、共感を覚え心地よい刺激も受けました。お二人のおかげで、穏やかで楽しい午後が過ごせました。ありがとうございました!